ショパン・エチュード集の楽譜選びーおすすめの原典版と学習版は?

多くのピアノ学習者にとって目標であり、ピアニストにとっては必須科目であるショパンの『エチュード』。重要な曲集だけに楽譜も良いものを選びたいですよね。今回はショパン原典版の比較と役立つ校訂版についてのまとめです。エチュード以外のショパン原典版の楽譜選びにも役立ちますよ!

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原典版も進化する!?

ショパンの肖像画

ここ数十年の間にレッスンでも原典版を用いることがすっかり定着しました。原典版とは単に自筆譜や初版のことを指すのではなく、“作曲者の意図を最大限正確に反映していると思われる楽譜”として編集されたものです。しかしショパンの原典版を作る上でいくつかの難しい点があります。

ショパンは初版をフランス、ドイツ、イギリスの異なる出版社から出したため、3つの初版にはそれぞれ異なる部分があります。また、ショパンは弟子を教えながら楽譜を修正することもありました。加えてショパンの死後に出版された作品の中には音に変更が加えられたものもあります。

そのため、新たに自筆譜やメモが発見されたり、ショパンについての研究が進むにつれて、原典版の内容(音の位置や和音、アーティキュレーション等)も新しくなっていきます。それで原典版を使う場合は、それが最新の研究成果が反映された信頼できる原典版であるか確認が必要です。

よく使われている原典版を比較してみよう!

1. ショパン原典版の新スタンダード!「エキエル版」

エキエル版『ショパン エチュード集』
エキエル版『ショパン エチュード集』

ポーランドの国家事業として編纂されたショパン全集「ナショナル・エディション」。ショパンの研究家で編集主幹であったヤン・エキエル氏(1913-2014)の名前をとってエキエル版と呼ばれています。入手可能なあらゆる資料をもとに綿密な研究がなされ、数十年かけて完成されました。ショパン国際ピアノコンクールで使用が奨励されている楽譜でもあることから、今や新たなスタンダードです。

エキエル版は全音楽譜出版社より順次日本語版が発売予定ですが、エチュード集はまだ日本語版が出ていません。(2021年10月現在)エチュード集には、作品10と作品25、「3つの新しいエチュード」全てが収録されています。コンクールや入試で使う場合はもちろん、本格的に学ぶ方には必携の楽譜です。

2. 手に入りやすく信頼度が高い「ウィーン原典版」

ウィーン原典版『ショパン エテュード集』
ウィーン原典版『ショパン エテュード集』

ウィーン原典版豊富な編集資料を載せていて信頼の置ける楽譜です。ショパンの楽譜にはヤン・エキエル氏が若い頃に校訂を手がけたものもあります。(エテュード集の校訂はパドゥラ・スコダ氏)初めて学習する方には資料が多く混乱するかもしれませんが、音楽之友社と提携しているため日本語の翻訳版があり、手に入りやすいのも良いところです。

ウィーン原典版のエテュード集にも作品10と作品25、そして「3つの新しいエチュード」全てが収録されています。楽譜にはショパンの自筆譜や他の信頼できる異稿との違いがすべて記載されているので、詳しい資料を参考にしたい方におすすめです。

(参考)改訂中で期待高まる「ペータース版」と定番の「ヘンレ版」

ペータース版『ショパン 3つの新しい練習曲/新批判校訂版』
ペータース版『ショパン 3つの新しい練習曲/新批判校訂版』

ペータース版からはショパン研究の最先端をゆく学者たちによる“新批判校訂版”(A New Critical Edition)が新たに出てきています。エチュード集はまだ『3つの新しい練習曲』だけですが、最新の研究成果が反映された原典版に期待が膨らみます。左上の赤いマークが目印です。

ヘンレ版『ショパン エチュード集』
ヘンレ版『ショパン エチュード集』

原典版といえばヘンレと言うほど、信頼でき美しい楽譜で定評あるヘンレ版からも改訂版が順次出てきています。エチュード集はまだ改訂版がありませんが、例えばバラード集には旧版(HN 295)と改訂版(HN 862)があります。改訂版はウェブページから資料をダウンロードできるようにもなっています。近年ヘンレ社はデジタル楽譜など新しい取り組みも見られ、今後のリニューアルも期待できそうです。

3. 以前は主流だった「パデレフスキ版」

パデレフスキ版『ショパン エチュード集』
パデレフスキ版『ショパン エチュード集』

ポーランドの初代首相にもなったピアニスト、イグナツィ・パデレフスキ(1860-1941)の名を冠したパデレフスキ版。以前は日本のみならず世界のピアニストに広く使用され、この版の楽譜による録音やアーティキュレーションに慣れている方も多いと思いますが、最新の研究と比べると異なっている部分もあるため、現在は参考用に使うのがよいでしょう。

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校訂版・学習版も上手に活用しよう!

原典版とは違い、その曲をどのように演奏すべきか校訂者が解釈を加えた(古き時代には音を変えてしまったものも!)楽譜を校訂版とか解釈版と呼びます。原典版時代の今日ではアーティキュレーションや指づかいの参考用として使うことが多いですが、中には演奏方法や練習方法などを詳しく載せている学習版もあり、上手に活用すれば大いに役立ちます。

詳しい練習方法が載っている学習版はこちら

1. 時代を超えて今なお価値ある「コルトー版」

コルトー版『ショパン エチュードOp.10』
コルトー版『ショパン エチュードOp.10』

コルトー版はピアニストであり教育者でもあった、巨匠アルフレッド・コルトー(1877-1962)が解釈を加え、演奏方法のアドバイスと詳細な練習方法を載せた学習版です。100年以上に渡って(序文の日付は1914年!!)多くのピアノ学習者に使用され、参考にされてきました。

コルトー版は作品10と作品25が別々の本で出ていて、「新しい3つのエチュード」は『ショパン 作品集 第2集』に収録されています。楽譜は見づらく音が異なる箇所もあるので注意が必要ですが、大ピアニストによる解説と練習方法は非常に参考になります。

2. 現代版のコルトー版!「山崎版」

山崎孝版『ショパン エチュード集Op.10』
山崎孝版『ショパン エチュード集Op.10』

全音楽譜出版社から出ている、ピアニスト山崎孝氏校訂による『ショパン エチュード集』。コルトー版のように各曲に練習方法、構成、指づかいなどが非常に丁寧に説明されています。楽譜にはショパンの手によるもの以外は載せられていないので安心して使え、学習用の楽譜としておすすめです。

山崎版も作品10と作品25に分かれていて、「新しい3つのエチュード」は作品25の巻末に収録されています。同じく全音から出ている標準版のエチュード集と似たような表紙なのでご購入の際には注意が必要です。

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楽譜はこちらから


いかがでしたか?良質な原典版と有用な校訂版を上手に活用して、ショパン・エチュードの練習がんばってくださいね!また皆さんが感じる各曲の難易度をこのサイトから投稿してみてください!(投稿の方法はこちらをご参照ください。)

山崎孝氏校訂のバッハ『インベンションとシンフォニア』の楽譜もおすすめですよ!

TeeJay

TeeJay
ピアノ教師。海外のとある国でピアノを教えつつ感じたのは、良質の楽譜に容易に接することができる環境は本当にありがたいということ。ピアノレッスンや練習で、テクニックの習得だけでなく、音楽を表現する楽しみを味わうのに役立ついろいろな楽譜をご紹介しています。

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