ツェルニー30〜40番併用:表現力を養えるヘラーの練習曲 Op. 45, 46, 47

「ヘラー 25の練習曲」(全音楽譜出版社)

ツェルニーの練習曲は賛否両論あるものの、練習曲の目的を理解し適切な方法で使えば有用な教材です。しかし同じ作曲家の練習曲を長年使うことにより、偏りが生じることへの不安もあるかもしれません。そんな時ツェルニー30〜40番と併用して、表現力を養えるヘラーの練習曲を活用してみるのも一つの方法です。

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ステファン・ヘラー

ステファン・ヘラー

ステファン・ヘラー(Stephen Heller, 1813-88)はハンガリー出身のピアニスト、作曲家です。幼い頃から神童ぶりを発揮し、11〜12歳頃ウィーンに移り、まずはツェルニーに、次いでアントン・ハルムにピアノを師事し、15歳から2年半はヨーロッパ各地を演奏旅行しました。25歳でパリに渡り、ベルリオーズやリスト、ショパンなどの作曲家と交流を深め、作曲家また教師として名声を高めました。19世紀半ばから後半にかけて、ヘラーはヨーロッパ音楽界において高い評価を受け、たくさんのロマン派作曲家たちに影響を与えました。

「25の旋律的練習曲」Op. 45

ヘラー 25の練習曲 Op. 45
「ヘラー 25の練習曲」(全音楽譜出版社)

ヘラーは生涯をピアノに捧げ、たくさんのすぐれた作品を生み出しましたが、現在一般的には中級用の練習曲(Op. 45から47)の作曲家としてのみ知られているのは残念なことです。しかし、この練習曲にはヘラーの優れた感性と技術、教師としての才能が詰まっています。

最もよく知られている「25の旋律的練習曲」Op. 45は、ヘラーのパリでの出世作「フレージングの技法のための24の練習曲」Op. 16のための導入教材として1844年に出版されました。メカニスムの習得だけに重点を置いた練習曲とは一線を画し、性格の異なる小曲を演奏しながら表現と技術を学べるように作られています。

難易度はツェルニー30〜40番程度。ツェルニーの練習曲と併用することにより、ツェルニーにはないタイプのテクニックを補い、本格的なロマン派の作品のための準備もできます。同じようなコンセプトで同程度の練習曲にブルグミュラー18の練習曲もありますので、好みに応じて使い分けてもよいでしょう。

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「30の段階的な練習曲」Op. 46,「25のリズムと発想の練習曲」Op. 47

ヘラー 30の練習曲(全音楽譜出版社)
「ヘラー 30の練習曲」(全音楽譜出版社)
ヘラー リズムと表現のための練習曲(全音楽譜出版社)
「ヘラー リズムと表現のための練習曲」(全音楽譜出版社)

作品45に続いて1849年に出版されたのが、旋律を美しく歌えるようになるのに役立つ「30の段階的な練習曲(30 Études mélodiques et progressives)」Op. 46と、ロマン派音楽を演奏するために必要なリズムと表現を学ぶための「25のリズムと発想の練習曲(25 Études pour former au sentiment du rhythme et à l’expression)」Op. 47です。

難易度は平均すると、いずれもツェルニー30番〜40番程度でほぼOp. 45と同じですが、Op. 47が少し易しく、Op. 46は(「Op. 45のための準備」と書かれていますが)少し難しい印象です。3冊全てを網羅する必要はなく、1冊選んで練習するか、3冊の曲の中から必要な曲だけをピックアップして用いると良いでしょう。

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ヘラーの練習曲の抜粋本もある!

"Heller Selected Studies Opus 45 and 46"(Schirmer)
“Heller Selected Studies Opus 45 and 46″(Schirmer)
"Heller Fifty Selected Studies for the Piano"(Schirmer)
“Heller Fifty Selected Studies for the Piano”(Schirmer)

Schirmer(シャーマー)社から出ている“Heller Selected Studies Opus 45 and 46”は、作品45と46からそれぞれ8曲ずつ厳選された合計16曲が収録されています。ツェルニーなどとの併用で少しさらっておきたい時に使える楽譜です。

“Heller Selected Studies Opus 45 and 46″の収録曲
作品45より第2, 9, 14, 15, 16, 18, 19, 20番
作品46より第1, 2, 5, 7, 12, 14, 25, 29番

同じくSchirmer(シャーマー)社の“Heller Fifty Selected Studies for the Piano”は、100年以上前から使われている伝統ある教材で、作品45, 46, 47から全50曲が抜粋されています。ツェルニーのようなメカニスム重視の練習曲ではなく、曲重視の練習曲をじっくり進めたい場合にはこちらもおすすめです。

“Heller Fifty Selected Studies for the Piano”の収録曲
作品45より第1, 2, 4, 5, 7, 9, 10, 14, 15, 16, 18, 19, 20, 23, 24, 25番
作品46より第1, 3, 5, 6, 7, 8, 10, 11, 12, 16, 17, 18, 19, 21, 23, 24, 25, 26, 27, 29番
作品47より第2, 3, 4, 5, 6, 9, 10, 13, 16, 17, 18, 19, 20, 23番

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収録曲をYouTubeで聴いてみよう!

作品45の曲のタイトルは曲想をイメージするのに役立つかもしれませんが、ヘラーがつけたものではありません…。

「なだれ(L’Avalanche)」Op. 45 第2番

(from: newFranzFerencLiszt)

「天使の声(Celestial Voices)」Op. 45 第9番

(from: newFranzFerencLiszt)

「戦士の歌(Warrior’s Song)」Op. 45 第15番

(from: newFranzFerencLiszt)

「気短か(Impatience)」Op. 45 第18番

(from: newFranzFerencLiszt)

「妖精と人形(Spirites and Mermaids)」Op. 45 第21番

(from: newFranzFerencLiszt)

「終結(Epilogue)」Op. 45 第25番

(from: newFranzFerencLiszt)

「30の段階的な練習曲」Op. 46(全曲)

(from: musicanth)

「25のリズムと発想の練習曲」Op. 47(全曲)

(from: Luis Angel Martínez)

ステファン・ヘラー 練習曲集(Op. 45, 46, 47 全曲)

(from: Brilliant Classics)
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楽譜はこちらから


いかがでしたか?短い練習曲の中に優れた感性の光る美しいメロディーが魅力的ですね。日々の練習に少しずつ取り入れることで、旋律を美しく歌い、十分に音楽を表現する力を養うのに役立ててみてくださいね!

ツェルニー40番と併用して用いることで音楽を美しく表現する力をもっと磨ける、モシュコフスキー「20の小練習曲」もおすすめです!

TeeJay

TeeJay
ピアノ教師。海外のとある国でピアノを教えつつ感じたのは、良質の楽譜に容易に接することができる環境は本当にありがたいということ。ピアノレッスンや練習で、テクニックの習得だけでなく、音楽を表現する楽しみを味わうのに役立ついろいろな楽譜をご紹介しています。

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