ツェルニー30〜50番は必須?練習曲の目的を理解し効果的に使おう

"Carl Czerny Collected Studies"(シャーマー社)
“Carl Czerny Collected Studies”(シャーマー社):ツェルニー30番・40番・50番が一冊に!

日本のピアノ学習者のほとんどが中級レベルに入るくらいからツェルニー30番、40番、50番を学習しますね。しかし、世界中のピアニストがツェルニーで学んだわけではないですし、否定的な評価もあるので、本当にツェルニーが必要だろうかと思うこともあるかもしれません。しかし、ツェルニーの練習曲はその目的を理解し適切な方法で用いればたいへん効果的な教材です。

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練習曲集の目的を知る

カール・ツェルニー
カール・ツェルニー (Carl Czerny, 1791-1857)

ツェルニーは「練習曲の王様」と言えるほど数多くの練習曲を作曲しましたが、各練習曲集のタイプも様々で、例えば次のようなタイプの分け方があります。

  • 短いパッセージの反復練習(「8小節の練習曲」Op. 821や「125のパッセージ練習曲」Op. 261など)
  • 特定のテクニックを習得するための短い曲30番〜50番など)
  • 音楽的に表現することを目的とした性格的な曲(「24の性格的大練習曲」Op. 692や「6つの練習曲あるいはサロンの楽しみ」Op. 754など)

つまり、30番〜50番練習曲はテクニックを磨くために作られた曲タイプの練習曲ということになりますが、「30番」と言った名称はツェルニーがつけたものではなく、本来は次のような名称です。

"Carl Czerny Collected Studies"(シャーマー社)
“Carl Czerny Collected Studies”(シャーマー社)
  • ツェルニー30番:「30の技巧練習曲」Op. 849
  • ツェルニー40番:「速度教本」Op. 299
  • ツェルニー50番:「指の熟達法」Op. 740

この名称を見ると、30〜50番練習曲の目的がいっそう鮮明になりますね。これらの練習曲は、ピアノ演奏に必要なテクニックを習得し、速く正確に弾けるように訓練するためのものなのです。

そのため、これらの練習曲は音楽性よりはテクニックの習得に重点が置かれています。よくツェルニーは音楽性がないと言われますが、実はツェルニーは下の動画のようなロマンチックな練習曲も作っています。

(ピティナ ピアノチャンネル PTNAより)

ツェルニー30〜50番を効果的に使用するために

上述したツェルニー30〜50番の目的をふまえつつ、次のような点に注意してこれらの練習曲集を効果的に使用しましょう。

1. 練習曲のための練習およびレッスン時間は適度に

ツェルニーの練習曲の目的は、ピアノ演奏に必要なテクニックを習得することでした。ですから練習曲を上手に弾くことだけが練習やレッスンの主な目標にならないように注意しましょう。習得したテクニックを用いて、時代や様式の異なる様々な作品を楽しむことを目指しましょう。

例えば、中級レベルでは、バッハの「インベンションとシンフォニア」や、モーツァルトやベートーヴェンのソナタ、ロマン派や近代、現代の名曲も積極的に取り入れてみましょう。

2. ツェルニーにないタイプを他の練習曲で補う

ツェルニー30〜50番は効率的にテクニックを習得する面では優れていますが、左手の練習やポリフォニー、音楽的な表現などを練習する面では物足りない部分があるのも否定できません。

練習曲と併用して学習する曲を通して学ぶこともできますが、他の練習曲から必要なテクニックを扱う曲を選んで練習すると効率的です。ブルグミュラーの18番練習曲やヘラーの練習曲(Op. 45〜47)、モシュコフスキーの20の小練習曲や15の練習曲から必要な曲だけピックアップしてみましょう。

いろんな作曲家の練習曲集からバランス良く選曲された楽譜も出ているよ!

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3. 速く正確に弾くためにメトロノームで確認を

ツェルニー30〜50番を気の向くままに弾いていてはこの練習曲の目的は達成できません。ツェルニーの練習曲にメトロノームは必須。まずはゆっくりとその曲で扱うテクニックに慣れるようにし、その後メトロノームの速度を少しずつ上げながら正確なリズムで弾けるように練習しましょう。

もちろん、ツェルニーが指定している速度は早すぎ(!)なので、指定速度の7〜8割ほどで弾けたら合格としましょう。

4. ツェルニー30番に入る前の準備

上述のように、この練習曲はある程度速く正確に弾かないと効果が上がらないため、ツェルニー30番を始める前にこの練習曲集をある程度の速度で弾けるレベルであるか確認が必要です。もう少しスキルアップが必要であれば、他の教材で補ってみましょう。

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YouTubeでツェルニー30〜50番の演奏を聴いてみよう

ツェルニー30番(30の技巧練習曲 Op. 849)全曲

(from: Cristophe Nicolosi)

ツェルニー40番(速度教本 Op. 299)第1番〜第23番

(from: Friends of Vivien Harvey Slater, pianist)

ツェルニー40番(速度教本 Op. 299)第24番〜第40番

(from: Friends of Vivien Harvey Slater, pianist)

ツェルニー50番(指の熟達法 Op. 740)全曲

(from:frankrm78)

いかがでしたか?ツェルニーの練習曲は必ずしも必須ではありませんが、上級を目指す学習者が必要なテクニックを効率的に習得するのに有用な教材です。ツェルニー50番の次は、60番(妙技教本 Op. 365)もありますが、モシュコフスキーの15の練習曲から必要な曲をさらって、ショパンのエチュードに進むことが多いと思います。練習曲を効果的に用いてピアニストへの道を進んでくださいね!

楽譜はこちらから

ツェルニーの「8小節の練習曲」は幅広く使える有用な教材です。

TeeJay

TeeJay
ピアノ教師。海外のとある国でピアノを教えつつ感じたのは、良質の楽譜に容易に接することができる環境は本当にありがたいということ。ピアノレッスンや練習で、テクニックの習得だけでなく、音楽を表現する楽しみを味わうのに役立ついろいろな楽譜をご紹介しています。

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